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更新日:2021年9月12日

オオゴマダラ観察日記(1期生)

1期生の飼育観察,始まる

5月7日(木曜日),卵4個が産み付けられたホウライカガミの枝を本校2階の「ホウライカガミコーナー」に持ち込み,子供たちによる飼育観察活動をスタートさせました。今日から羽化する日まで,観察して分かったことをお伝えします。

産卵するオオゴマダラ オオゴマダラコーナーの卵

 

【5月7日(木曜日)】産卵から0日

 蝶小屋から持ち込んだ生まれたての卵は,だ円形のきれいな白色。卵の大きさは,約2mmくらいです。とても小さいですが,ホウライカガミの葉っぱの色が背景になると,よく目立ちます。

 さて,この卵は何日後にふ化するのでしょうか。また,ふ化まで卵の大きさや色に変化はあるのでしょうか。これからじっくりと観察します。

生まれた直後の卵生まれたての卵アップ

 

【5月11日(月曜日)】産卵から4日目

 夕方に観察すると,楕円形できれいな白色をしていた卵は,いびつな形になっていました。また,色も茶色がかった黄色に変化していました。さらに,卵の上部に黒い点が現れていました。この点ははもしかして幼虫の頭ではないでしょうか。「明日の朝には生まれるのではないか」と期待が膨らみます。ちなみに,卵の大きさは2mm。生まれた時から大きさに変化はありません。 卵に現れた黒い点黒い点が現れた卵

【5月12日(火曜日)】産卵から5日目

 早朝,オオゴマダラコーナーに足を運ぶと,昨日の予想は的中していました。ホウライカガミの葉の裏で,小さな幼虫が卵の殻を食べています。生まれた直後に卵の殻を食べるのは,モンシロチョウと同じですね。生まれたての幼虫の大きさは約5mm。色は透明がかった白色をしています。頭だけは黒色です。「やはり,卵の黒い点は幼虫の頭の色だったのだな」と思っていると……。

 隣にあった同じように黒い点が現れている卵の様子が変です。動いているように見えます。「これは,ふ化の様子が撮影できるぞ」と急いでビデオカメラを準備して撮影しました。幼虫の頭が卵の殻から現れてから約1分間。ふ化はあっという間に終わりました。「生まれたばかりの幼虫が最初にすることは何だろう」と思っていた矢先,すぐに卵の殻を食べ始めました。だれが教えたのか分かりませんが,生まれてすぐに卵の殻を食べるとよいということをこの小さな幼虫が知っていたのです。生命誕生の神秘と自然の不思議に触れ,「もっと調べてみたい」という気持ちがふつふつとわいてきました。この日は,卵の殻を食べつくし,ホウライカガミの葉を1日中食べていました。

 ふ化途中の写真は,ビデオカメラを回していたので撮影できませんでした。しかし,動画はばっちり撮れました。生命誕生の瞬間を,ぜひご覧ください。

ふ化直前の卵孵化直前の卵
ふ化直後の幼虫ふ化直後の幼虫
卵の殻を食べる幼虫ふ化直後に卵の殻を食べる幼虫

【5月13日(水曜日)】産卵から6日目,ふ化後1日

 今日も1日中ホウライカガミの葉を食べ続けました。大きさは,7mmありました。ふ化直後より,すでに2mmも大きくなったことになります。体の色も少し黒みがかってきて,おぼろげですが,しま模様が見られました。葉の裏をけずり取るように食べ,葉には,白い泡が見られました。

疑問:この白い泡の正体は何だろうか。

予想を立ててみました

  1. 幼虫のふんである。
  2. けずるような食べ方で,ホウライカガミの葉の汁が泡立った。
  3. 何か特別な液を出して葉を溶かしている。

分かったら,お伝えしますね。

白い泡を残しながら食べる幼虫生後1日の幼虫

【5月14日(木曜日)】産卵から7日目,ふ化後2日

 幼虫の色が完全に黒色に変化し,白と黒のしま模様がはっきりと認識できるようになりました。オオゴマダラの小さな幼虫だと,だれが見ても分かります。ただし,幼虫の頭部と尾部に見られる角はまだはっきりとは確認できません。また,赤い斑点もあるのかないのかよく分かりません。大きさは8mmになりました(前日比+1mm,ふ化から+3mm)。相変わらず食欲旺盛です。まだ,食べた後に白い泡のようなものが確認できます。 黒く色づいた幼虫(幼虫の右下は白い泡)黒く色づいた幼虫

【5月15日(金曜日)】産卵から8日目,ふ化後3日

 今日,オオゴマダラコーナーに置いた4つホウライカガミの鉢(5月12日(火曜日)に設置)に幼虫を1頭ずつ移し,個体調査を行うことにしました。4つの鉢のうち,2つの鉢は,日なたに置き,残りの2つの鉢は日陰になるように覆いをして育てるようにしました。つまり,日なたと日陰で成長の度合いに差があるかを調べるということです。大きな差が見られた時には,逐一お伝えしますね。ちなみに,この観察日記では,日なたに置いた1番の鉢の幼虫の様子を中心にお伝えすることにします。

 今日の幼虫には,これまでにない3つの変化が見られました。1つめは,頭部と尾部に見られる角がはっきりと現れてきたことです。頭部に6本,尾部に2本の角が確認できました。また,赤い斑点がくっきりと現れました。2つめは,ホウライカガミの食べ方が変わったことです。これまでは葉の裏面をけずり取るように食べていました。しかし,今日は葉のふちからかじりつくように食べていたのです。3つめは,白い泡のようなものがホウライカガミに残らなくなったことです。代わりに,小さなふんを確認することができました。また,移動範囲も広くなり,ホウライカガミをはい回るようになりました。1時間ほど目を離すと,見つけることが困難なくらいです。

 ちなみに,大きさは,1cmありました(前日比+2mm,ふ化から+5mm)。ふ化後3日で2倍の大きさになったのです。驚異的な成長の早さです。

4つの鉢での個体調査四つの鉢
計8本の角と赤い斑点が確認できました3日目の幼虫
葉をかじる幼虫(左上)と小さな糞(右下)3日目の幼虫の糞

【5月16日(土曜日)】産卵から9日目,ふ化後4日

 今日の幼虫は,昨日と比べて移動距離も短く,あまりホウライカガミを食べなくなりました。脱皮前は,じっとしていることが多いのですが,もしかしたら,近々初めての脱皮をするのかもしれません。これまで本校では,脱皮の様子を動画撮影ありません。このチャンスをぜひものにしたいです。ちなみに,今日の幼虫の大きさは11mmでした(前日比+1mm,ふ化後+6mm)。 4日目の幼虫(角が多いほうが頭です。)4日目の幼虫

【5月17日(日曜日)】産卵から10日目,ふ化後5日

 午前10時,期待を胸にオオゴマダラコーナーに向かいましたが,脱皮していませんでした。一心不乱にホウライカガミの葉を食べています。変態は,午前中に起きるため,今日の脱皮はなさそうです。それよりも,びっくりしたのはその大きさ。測ってみると15mmもありました(前日比+4mm,ふ化後+10mm)。5日間で3倍大きくなったことになります。

幼虫5日目

【5月18日(月曜日)】産卵から11日目,ふ化後6日

 今日は,枝にくっついてじっとしている時間が長かったです。ホウライカガミもあまり食べませんでした。明日こそ脱皮するのでしょうか。期待せずに待ちたいと思います。ちなみに,あまり食べなかった割に,体長はさらに大きくなっていました。何と20mmもありました(前日比+5mm,ふ化後+15mm)。これまでの成長の最高記録です。6日間で4倍大きくなりました。

じっとしている幼虫

【5月19日(火曜日)】産卵から12日目,ふ化後7日

 今日も脱皮は確認できませんでした。気づかないうちに脱皮しているのでしょうか。今日の幼虫の体長は,23mmでした(前日比+3mm,ふ化後+18mm)。

 ちなみに,他の幼虫たちも,日なた,日陰に関係なく,順調に成長しています。大きさに差はありません。今のところ,日なたと日陰で大きな成長の差はなさそうです。

幼虫7日目

【5月20日(水曜日)】産卵から13日目,ふ化後8日

 今日もほとんど動きませんでした。一方,成長のスピードはとても速いです。幼虫の大きさは,28mmにもなりました(前日比+5mm,ふ化後+23mm)。

 ところで,生まれたばかりの幼虫がホウライカガミを食べた後に残る白い泡の正体が分かりました。「アルカロイド」という有毒な成分が染み出てきたものなのだそうです。キョウチクトウ科のホウライカガミが毒草であることは,よく知られていますが,オオゴマダラは,ホウライカガミを食べるときに,アルカロイドを体内にため込んでいるのです。そして,成虫になった後も,この毒が体内に残っているため,外敵に食べられないのだそうです。まるで危機感のない優雅な飛び方は,「毒のあるわたしは食べられないわよ」という余裕の表れなのかもしれませんね。身を守るために毒をため込む。本能なのでしょうが,恐るべき方法ですね。

今日もじっとしている幼虫じっとしている幼虫(3)
生まれたての幼虫とアルカロイド(白い泡)一齢幼虫とアルカロイド

【5月21日(木曜日)】産卵から14日目,ふ化後9日

 今日もやっぱりじっとしていました。それでも,幼虫の大きさはどんどん大きくなります。じっとしている日の方が大きくなるのではないかとすら思えてきます。幼虫の大きさは,3cmを超え,32mmになりました(前日比+4mm,ふ化後+27mm)。

 ちなみに,じっとしている日でも,防御本能は働きます。葉を揺らすと,「Jの字」に体を曲げる。これは,幼虫の習性です。

体をJの字に曲げ,防御の姿勢をとる幼虫幼虫の防御本能

【5月22日(金曜日)】産卵から15日目,ふ化後10日

 今日,やっと脱皮を確認できました。しかし,気付いたのが脱皮直後だったため,動画に収めることはできず……。脱皮直後の体長は35mmありました(前日比+3mm,ふ化後+30mm)。大きさからいうと4齢幼虫と思われます。ということは,これまで2回の脱皮を見逃したことになります。そして,残された脱皮はあと1回です。次は何としても動画に収めたいものです。成功したら,すぐに動画をアップしますね。 脱皮直後の幼虫(左は脱いだ皮)脱皮直後の幼虫

【5月23日(土曜日)】産卵から16日目,ふ化後11日

 脱皮翌日,これまでと打って変わって,盛んにホウライカガミを食べるようになりました。昨日までの様子からすると,まるで別の生き物のようです。大きさも一気に41mmになりました(前日比+6mm,ふ化後+36mm)。朝と夕方を比べても,幼虫が入れ替わったかと思うくらいです。この特徴を生かせば,じっとしている日と盛んに食べる日の境目を脱皮の日と仮定して,今,何齢幼虫かを特定できるかもしれません。

盛んにホウライカガミを食べる幼虫脱皮翌日の幼虫

 「ホウライカガミを食べる幼虫」の動画を視聴する(外部リンク)

【5月24日(日曜日)】産卵から17日目,ふ化後12日

 今日も盛んにホウライカガミを食べていました。成長も目覚ましく,一気に48mmになりました(前日比+7mm,ふ化後+43mm)。

 さて,昨日の仮説から脱皮日を推定すると……。

 1齢幼虫:5月12日~5月14日(5月14日脱皮)

  • 幼虫の変色は,脱皮した証拠だそうです。

 2齢幼虫:5月14日~5月16日(5月16日脱皮)

3齢幼虫:5月16日~5月22日(5月22日脱皮)

4齢幼虫:5月22日から

5齢幼虫:次回の脱皮から

となります。

 次にじっとしている姿を確認出来たら,最後の脱皮の前兆だと考えられます。また,蝶は5齢幼虫まで変態し,次の脱皮は蛹化だということは分かっています。つまり,次の脱皮の後,蛹化が確認出来たら,この仮説は正しいということになります。早く確認したいものです。

 なお,昨日から,脱皮後の皮が確認できません。幼虫は卵の殻と同じように,脱皮後の皮も食べるのでしょうか。これも要確認事項です。

脱皮直後の2齢幼虫(5月14日推定)1回目の脱皮
脱皮直後の3齢幼虫(5月16日推定)2回目の脱皮
脱皮直後の4齢幼虫(5月22日)3回目の脱皮

【5月25日(月曜日)】産卵から18日目,ふ化後13日

 今日は,ホウライカガミの鉢の支柱にしがみついて,一日中じっとしていました。また,頭を下にして,体を縮めていました。これまでの観察記録から考えると,5齢幼虫への脱皮の前兆と思われます。今度こそ,動画に収めたいものです。

 なお,縮こまっているにもかかわらず,体長は52mmありました(前日比+4mm,ふ化後+47mm)。

支柱にしがみつき,じっとしている幼虫支柱でじっとしている幼虫

 

【5月26日(火曜日)】産卵から19日目,ふ化後14日

 今日も体を縮めてじっとしていました。幼虫の大きさは57mmありました(前日比+5mm,ふ化後+52mm)。

 ちなみに,20時に見回りをしていると,日中はじっとしていた2頭の「日なたグループ」の幼虫が,暗闇の中でホウライカガミを食べていました。逆に,日中にひたすらホウライカガミを食べていた「日かげグループ」の2頭の幼虫は,じっとしています。昼夜逆転しているのでしょうか。

 日光が当たりすぎると,食欲が減退し,その反動で,夜におなかがすいてしまうのでしょうか。でも,日中にひたすら食べ続ける姿は,これまでの観察で「日なたグループ」の幼虫においても確認されています。もしかしたら,脱皮や蛹化の直前に見られる特徴なのかもしれません。

 分からないので,明日も,夜の観察を行って真相を探ってみたいと思います。

今日もじっとしていた幼虫体を縮めじっとしている幼虫(1)
夜に暗闇でホウライカガミを食べる幼虫暗闇でホウライカガミを食べる幼虫

【5月27日(水曜日)】産卵から20日目,ふ化後15日

 今日もほとんど動かずにじっとしていました。体長は57mm(前日比+0mm,ふ化後+52mm)。皮にしわが入り,縮んでいるように見えます。

 ちなみに,20時の観察では,この幼虫を含めた「日なたグループ」「日かげグループ」の4頭みんなが,暗闇の中でホウライカガミを食べていました。暗いのに,どうして葉のふちが分かるのでしょうか。ホウライカガミのにおいでしょうか。

しわが入り縮んでいるかのような幼虫縮んでじっとしている幼虫(2)

【5月28日(木曜日)】産卵から21日目,ふ化後16日

 午前中の観察で,驚きの変化が見られました。何と体長が縮んでいたのです。48mmなので,9mm縮んだことになります。皮にはさらにしわが入り,ほとんど動きません。

 その理由は,夕方に分かりました。校舎の見回りをしていると,幼虫の前足6本が葉から離れ,反り返っていました。あわててビデオ撮影を開始しました。

 ゆっくりと時間をかけながら,尾部から出した白い固まりを,最後尾にある足(吸盤状)で挟み込み,少しずつ,残り6つの足をホウライカガミの葉から離していきました。そして,くっついている足が残り一つになった後,しばらくの間,体をゆっくりとくねらせ続けました。そして,20時ごろ,最後の足が離れ,完全に逆さまにぶら下がりました。明日,蛹化が確認できることでしょう。

体を反って,蛹化の準備を進める幼虫蛹化の準備(1)
完全に逆さまにぶら下がった幼虫蛹化の準備(2)

 

【5月29日(金曜日)】産卵から22日目,ふ化後16日,蛹化後0日

 午前中,思ったよりも早く蛹化しました(10時には蛹化していました)。大きさは30mm。幼虫の頃の体長からすると,随分小さくなった印象です。しかし,蛹としては立派な方です。きっと大きな成虫になることでしょう。

 蛹化直後の蛹は,黄色い液で満たされていて,中が透けて見えます。よく「金色の蛹」といわれますが,厳密にいうと,重層になっている外膜に光が当たって反射するとき,「金色に見える」のだそうです(構造色と言われます)。つまり,この明るい黄色が,本来の色なのです。あと2,3日後には,外膜も完成し,金色に輝くことでしょう。

 ちなみに,今回は,蛹化の瞬間をとらえることができませんでしたが,以前撮影した写真を掲載します。なお,蛹化の動画も下の外部リンクから視聴できます。御覧ください。

蛹化の様子(令和元年7月撮影)蛹化の様子
蛹化直後の蛹(黄色い液が透けて見えます。)蛹化直後の蛹

 

 

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